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- なぜ六甲ライナーは「時代に逆行する形」を選んだのか? ― 空間を解き放つ「パイプの造形」
AGT研究所の増川です。 AGTブログへ、ようこそ。 今回取り上げる話題は、 なぜ六甲ライナーは「時代に逆行する 形」を選んだのか? ― 空間を解き放つ 「パイプの造形」 です。 2005年の福知山線事故以降、日本の 通勤電車から「パイプ状の袖仕切り」が 姿を消しました。 衝突時の怪我を防ぐため、多くの鉄道が 「大型の板状プレート」へと切り替えた のです。 この流れはAGT(新交通システム)の 第二世代車両にも波及しました。 ゆりかもめ7300系を筆頭に、多くの 最新車両が選んだのは「透明な強化ガラ ス」による仕切りです。 視線を遮らずに閉塞感を解消する このアプローチは、安全性と開放感を 両立させる、非常に理にかなった現代の 最適解といえます。 そんな「ガラスの時代」に、あえて 一本のシンプルなパイプへと立ち返った のが、2018年登場の六甲ライナー 3000形です。 一見、旧世代への退歩に見えますが、 そこにはAGTの特性を冷静に分析した 計算があります。 AGTは「踏切ゼロの専用軌道」を 「時速60km以下」で走るため、 他列車や自動車との衝突リスクが 理論上極めて低いのです。 万が一の衝撃を最小限に抑えられると いう絶対的な確信があるからこそ、 ガラス板ですら「空間を仕切る壁」とし て削ぎ落とすことが可能になりました。 六甲ライナーが選んだのは、標準化 された安全基準ではなく、自らの環境を 科学して導き出した「能動的な安全」 です。 仕切りを最小限のパイプに留めることで 、車内には物理的にも視覚的にも 「壁」が存在しない、圧倒的に広々と した空間が生まれました。 この細いパイプ一本には、 「過剰な防壁を廃し、乗客に真の自由を 届ける」という都市インフラとしての 誠実な知略が込められているのです。 「ガラスによる透明性」か、 「パイプによる空間の連続性」か。 これはどちらが優れているかという 議論ではなく、その街が、そのインフラ が、乗客に何を届けたいのかという 決意の差です。 次に六甲ライナーに乗るときは、 その細いパイプの向こう側に広がる、 遮るもののない景色と開放感を感じて みてください。 その「究極のシンプル」こそが、 六甲アイランドという街が選んだ、 最高のおもてなしなのです。 次回のAGTブログもお楽しみに!
- なぜポートライナーはロングシートを止めてクロスシートを選んだのか?
AGT研究所の増川です。 AGTブログへ、ようこそ。 今回取り上げる話題は なぜポートライナーはロングシートを 止めてクロスシートを選んだのか? です。 1人でも多く運ぶことに腐心する都市 鉄道において、効率の象徴である 「ロングシート」をあえて捨てた路線が あります。 それが、日本初のAGTとして走り続ける ポートライナーです。 第2世代車両で彼らが選んだのは、 意外にも「クロスシート(前向き座席)」 への転換でした。 この一見「非効率」な決断の裏には、 神戸という街の新しい戦略が隠されて います。 このシートアレンジの背景にあるのは、 神戸空港連絡線という第1世代には なかった新しい機能です。 飛行機を降り、最初にこの街に触れる 乗客たち。 彼らに、高架軌道というAGTならではの 高い視点から、躍動するハイテク都市・ 神戸のパノラマを堪能してもらうこと。 それが、この座席に込められた設計思想 です。 ただ移動するだけでなく、街を好きに なってもらう。 クロスシート配列に、神戸の風景を贈る という誠実なホスピタリティが刻まれて います。 一方で、他の路線は異なる正解を選んで います。 日暮里・舎人ライナーが「究極の効率」 を求めてロングシートを貫く一方で、 大阪のニュートラムは、あえて左右非 対称の配列で「立席面積の最大化」の 挑戦をしています。 座席数が減り、サービス低下と表裏一体 の面もありますが、これらもまた 「ラッシュ時の混雑を凌ぐ」という 切実なニーズへの一つの回答です。 座席の向き一つにも、その街が乗客に 何を届けたいのかという「知略」が 込められています。 次にポートライナーに座るときは、 ぜひ眼下に広がる景色を楽しんで ください。 クロスシート配列は、神戸という街が あなたを歓迎している証なのです。 次回のAGTブログをお楽しみに!
- なぜ「ゆりかもめ」では脚を投げ出す人が少ないのか? ― 快適さを科学した「6度の秘密」
AGT研究所の増川です。 AGTブログへ、ようこそ。 今回取り上げる話題は、 なぜ「ゆりかもめ」では脚を投げ出す人 が少ないのか? ― 快適さを科学した 「6度の秘密」 です。 通勤電車で、通路に投げ出された脚に 躓きそうになったことはありませんか? 「マナーを守りましょう」という呼びか けだけでは解決しないこの問題。 実は「ゆりかもめ7300系」には、 言葉を使わずにこの課題を解決する、 驚くべき秘密が隠されています。 その秘密は、通勤車両で初めて採用され た「G-Fit」というシートの形状にあり ます。 最大の特徴は、座面の前縁を後ろ側より 「6度」高く設定していることです。 人間は、このわずか6度の傾斜がある 座面で脚を前に投げ出そうとすると、 構造上「踵が浮く」ようになっています。 踵が浮くと座り心地が不安定になるため、 乗客は無意識のうちに踵を自分の方へ 引き寄せ、自然と「行儀のよい姿勢」に 導かれるのです。 これは単なる「姿勢矯正」ではありませ ん。 脚が通路からはみ出さないことで、 車内には「見えない余白」が生まれます。 混雑時でもスムーズに移動でき、 キャリーバッグも通りやすくなる。 「マナーを強制する」のではなく、 デザインの力で「自然に譲り合える空間」 を創り出す。 これこそが、都市インフラが目指すべき 誠実な解決策です。 座面の微妙な角度一つで、街の空気は もっと優しくなれる。 この「6度」の傾斜は、乗客の快適さを 守るための緻密な計算の結晶です。 次に「ゆりかもめ」に座るとき、 その足元に込められた「都市の知略」を ぜひ感じてみてください。 次回のAGTブログもお楽しみに!
- なぜ最新のAGTは、最前列を「車椅子」に開放したのか? ― 「移動」を「楽しさ」に変える都市の知略
AGT研究所の増川です。 AGTブログへ、ようこそ。 今回取り上げる話題は、 なぜ最新のAGTは、最前列を「車椅子」 に開放したのか? ― 「移動」を 「楽しさ」に変える都市の知略 です。 1981年、日本初のAGTとして誕生した ポートライナーから40余年。 AGTは今、単なる効率的な移動手段から、 「すべての人に優しい都市の風景」 そのものへと進化しています。 その象徴が、2020年に登場した広島の アストラムライン7000系に見られる、 劇的なユニバーサルデザインの転換です。 かつての車両には、車椅子スペース自体 がほとんど存在しませんでした。 しかし最新の7000系では、なんと 車両の最前部に車椅子利用者の前面展望 スペースを配置しています。 都市の躍動的な景色を、誰もが等しく 楽しめる「特等席」として開放したの です 。 さらに注目すべきは、中間車両に設け られた折り畳み式のシートです。 これは単なる予備座席ではありません。 車椅子やベビーカーの介助者が、 利用者のすぐ隣に腰を下ろし、 同じ目線で一息つける場所。 この数センチの配慮が、孤独になりがち な移動の時間を、豊かなコミュニケーシ ョンの場へと変えています 。 こうした進化は、単なる設備の充実では ありません。 かつての「乗れれば良い」という最低限 のバリアフリーから、「誰もが等しく、 街を遊び、景色を楽しめる」という、 一歩進んだ社会の豊かさを示しています。 ※(参考:別記事で触れた天井裏の 22mmが「人のための空間」を拓いた ように、UDの進化もまた「人の尊厳」を 支える設計思想に基づいています 。) 初代車両と比べると、この変化はまさに 隔世の感があります。 最前列から広がる景色を、誰もが笑顔で 共有できること。 AGTの進化に刻まれているのは、 時代とともに磨かれてきた、都市として の「誠実さ」そのものです。 次にアストラムラインに乗るときは、 ぜひその「最前列」が語るメッセージを 感じてみてください 。 次回のAGTブログもお楽しみに!
- なぜAGTだけが「無人」で走れるのか? ― 30mの高架から「歩いて逃げられる」という決め手
AGT研究所の増川です。 AGTブログへ、ようこそ。 今回取り上げる話題は なぜAGTだけが「無人」で走れるのか? ― 30mの高架から「歩いて逃げられる」 という決め手 です。 45年前にAGTが登場した際、無人運転の 主目的は「人件費の削減」でした。 しかし現代、深刻な運転士不足が現実と なり、無人運転は単なるコスト削減策で はなく、インフラを「動かし続ける」た めの生命線へとその意義を変えています。 実は、日本の鉄道の多くは「完全無人」 になれません。 地下鉄では、火災などの非常時に乗客を 誘導するスタッフの同乗が義務付けられ ており、技術的には可能でも制度上 「運転士付き自動運転」にとどまって います。 それでは、AGTと同じ高架を走る モノレールはどうして無人運転が難しい のでしょうか。 その理由は、高架からの脱出が乗客だけ では難しいからです。 それに比べ、AGTは車両の前後に設けら れた非常口や非常階段から乗客が軌道に 降り、軌道を歩いて近くの駅まで避難する ことができます。 この「自力で安全に避難できる構造」 という具体的な設計の違いこそが、 完全無人運転を可能にする法的根拠と なっているのです。 この「無人」の強みが最も発揮されるの が、イベント時の増発です。 通常の鉄道なら何ヶ月も前から運転士の シフトの調整が必要ですが、AGTなら 車両さえ整備されていれば、スイッチ 一つで柔軟に列車を増やせます。 運転士不足に悩むことなく、需要の波を 飲み込める機動力こそが、AGTの大きな 優位性です。 「無人」という選択は、決して冷たい 合理化ではなく、人手不足という社会課題 に対する誠実な回答です。 いつでも確実に走り続け、時代の変化に 寄り添う。 AGTの構造に秘められた知略は、 これからの都市インフラが生き残るための 重要なヒントを示しています。 次回のAGTブログもお楽しみに!
- なぜ「ゆりかもめ」は、芝浦ふ頭で大きな円を描くのか? ― 30mを登るための、対照的な二つの解決策
AGT研究所の増川です。 AGTブログへ、ようこそ。 今回取り上げる話題は なぜ「ゆりかもめ」は、芝浦ふ頭で大き な円を描くのか? ― 30mを登るための 、対照的な二つの解決策 です。 レインボーブリッジをゆりかもめで渡る 際、左右で全く景色が異なることに 気づいていますか? お台場側は「600mの真っ直ぐな坂」で すが、新橋側(芝浦ふ頭)は「巨大な ループ」を描いています。 同じ30mの高低差を克服するために、 なぜこれほど対照的な姿をしているのか。 そこには、限られた都市のスペースを いかに有効活用するかという、現実的な 設計上の判断がありました。 お台場側は、50‰(1000mで50m登る 勾配)という急坂を直線で登り切ります。 これに対し、土地に余裕のない芝浦側で 採用されたのが、直径270mのループで す。 「急カーブに強い」というAGTの特性を 活かすことで、お台場側の約半分の 専有面積で、同じ高さを昇降しています。 既存の建物を壊さず、道路や港湾機能を 維持したまま線路を通すための、機能的 な選択だったのです。 そもそも、なぜこれほど高い場所 (桁下60m)まで登る必要があった のでしょうか。 それは、かつての世界最大級の客船、 クイーンエリザベス二世号などを橋の 下に通すためでした。 船を通すために橋を高くし、その高い 橋に接続するためにループを作る。 当時の最先端のニーズに合わせた設計で したが、皮肉にも現代のクルーズ船は さらに巨大化し、60mの高さでも くぐれないものが増えています。 その結果、橋の外側に 「東京国際クルーズターミナル駅」と いう新しい拠点が作られましたが、 大型船が接岸しない日は、静かな風景が 広がっています。 橋をくぐるために作られたループと、 橋をくぐれなくなった現代の巨大船。 この景色は、インフラがその時々の 最適解を求めて形を変え、時代の変化を 受け止め続けてきた跡でもあります。 次にこの円を通るとき、足元の曲線に 刻まれた都市の歴史を感じてみてくださ い。 次回のAGTブログもお楽しみに!
- なぜ「単線」が最強の選択なのか? ― レオライナーとユーカリが丘線が示す、単線AGTの持続可能性
AGT研究所の増川です。 AGTブログへ、ようこそ。 今回取り上げる話題は、 なぜ「単線」が最強の選択なのか? ― レオライナーとユーカリが丘線が示す、 単線AGTの持続可能性 です。 1日の利用者が2〜3千人。 この数字だけを見れば、多くの人は 「バスで十分じゃないか」と思うかも しれません。 しかし、そこにはバスでは絶対に解決 できない「都市のジレンマ」があります。 その答えを握るのが、日本に10路線ある AGTの中で、あえて「単線」を選んだ 2つの異端児、レオライナーとユーカリ が丘線です。 単線で運行を回すには、緻密な 「すれ違いの設計」が不可欠です。 西武山口線(レオライナー)は、 両端の駅から同時に出発した車両が、 路線のちょうど真ん中でピタリと すれ違うことで、単線運行を成立させて います。 一方、ユーカリが丘線はユニークな 「ラケット型」のループ線を採用し、 柄の付け根にあたる駅ですれ違う構造 です。 単線の採用は、建設費と保守費を劇的に 抑え、永続的に路線を守るための戦略的 選択です。 なぜ、そこまでして単線の軌道を維持 するのか。 それは「バスには真似できない質」を 届けるためです。 レオライナーは、イベント終了時に吐き 出される「バスでは到底捌ききれない」 爆発的な観客を、AGTの輸送力で飲み込 みます。 また、デベロッパーが運営する ユーカリが丘線は、 鉄道という「時間が正確なインフラ」が あるからこそ、沿線の地価を高く保ち 続けています。 単線という「持続可能なサイズ」への ダイエットこそが、街の価値を維持する ための戦略的な投資なのです。 複線が当たり前、スピードが速いのが 当たり前。そんな常識を捨て、 街の身の丈に合わせた「単線」で 走り続ける。 次にこの2路線に乗るときは、 すれ違いの瞬間に注目してみてください。 そこには、無理をせず、しかし決して 妥協せずに街を守り続ける、インフラの 誠実な姿が映っているはずです。 次回のAGTブログもお楽しみに!
- 開放的な「展望席」に潜むリスクと、インフラを支える「見えない壁」 ― AGTと女性運転士の安全を守るために
AGT研究所の増川です。 AGTブログへ、ようこそ。 今回取り上げる話題は 開放的な「展望席」に潜むリスクと、 インフラを支える「見えない壁」 ― AGTと女性運転士の安全を守るために です。 AGTの最前列は、子供たちが目を輝かせ て景色を楽しむ特等席です。 しかし、習熟運転などのマニュアル運転 のために操作パネルが開かれるとき、 そこは日本で最も「無防備な運転席」へ と姿を変えます。 私は電車に乗ると運転席の後ろから 路線の様子を見るのが好きですが、 最近ではニューシャトルやユーカリが丘 線などの有人運転路線でも、女性運転士 の活躍を目にする機会が増えました。 有人運転のAGTやモノレールには、 乗客と運転士を隔てるしっかりとした 「仕切り壁」が存在します。 しかし、無人運転を前提としたAGT車両 には、その壁がありません。 普段は乗客が座っている座席のパネルを 開いて運転台にするため、運転士のすぐ 後隣に乗客がいるという、物理的に きわめて「ゼロ距離」な環境なのです。 この開放感はAGTの魅力ですが、 習熟運転中の運転士、特に女性運転士に とっては、心無い乗客とのトラブルや セクハラのリスクに直面する場所でも あります。そのため、現在は運転席横の 補助席に別の職員が添乗したり、 後方にロールカーテンを下ろしたり、 仕切り棒を設けたりして安全を確保しな ければならないのが実情です。 現在、バス業界をはじめとする公共交通 全体で、深刻な運転士不足が課題となっ ています。 女性運転士の採用増に向け、防犯カメラ の設置や休憩室の整備など、女性が安心 して働ける環境づくりが急ピッチで進め られています。 AGTが追求してきた「運転室をなくして 空間を広げる」という合理的な設計が、 皮肉にも「人間が介在する際」の障壁に なっているという側面は否定できません。 インフラを支える「人」を守るための 投資は、もはや福利厚生ではなく、 公共交通を持続させるための必須条件で す。 利用者にとっての「ハーフマイルの 優しさ」を追求するAGTだからこそ、 運行を支える側にとっても優しい システムであるべきです。 景色を遮る壁をなくしたAGTの美しさを 維持するためには、物理的な壁の代わり に、社会全体で働く人をハラスメントか ら守る「見えない壁」を築いていく 必要があるのではないでしょうか。 次回のAGTブログもお楽しみに!
- 天井裏の22mmが拓く「都市のゆとり」 ― コンパクトさと快適さを両立する超薄型照明の革新
AGT研究所の増川です。 AGTブログへ、ようこそ。 今回取り上げる話題は 天井裏の22mmが拓く「都市のゆとり」 ― コンパクトさと快適さを両立する 超薄型照明の革新 です。 AGTの車内に一歩足を踏み入れたとき、 ふと天井を見上げてみてください。 そこには、凹凸のない滑らかな面が 広がり、眩しさを抑えた優しい光が 空間を包み込んでいます。 この圧倒的な開放感を支えているのが、 今回ご紹介する厚さわずか22mmの 「超薄型LED照明」です。 AGTのトンネルの高さは走行面から わずか3.5メートルと、非常にコンパク トに設計されています。 走行面から車両の床までの高さは、 約1.1メートルありますので、 車両床から屋根までの高さを 2.2メートル以下に抑える必要がありま す。 その限られた空間の中で「乗客の頭上の 余裕(ヘッドクリアランス)」を 1mmでも確保したいという切実な課題が ありました。 そのため、照明メーカーと車両メーカー が協力し、LED光源を端部に配置して 反射板と拡散フィルムで光を回す 「エッジライト方式」を初めて車両に 採用しました。 これにより22mmという極限の薄さと、 LEDの粒が見えない均一な面発光という 、美しさと機能性の両立に成功したので す。 なぜ、これほどまでに薄さにこだわる のでしょうか。 視点を街全体に広げてみると、 この22mmが持つ「社会的な価値」が 見えてきます。 AGTの採用によってトンネルを小さく できるということは、都市部での建設 コスト削減や工期の短縮に直結します。 つまり、超薄型照明は、都市インフラを スリムにするという「社会の合理性」と、 25㎜しかない天井裏スペースに埋め込む ことによって、天井の滑らかな仕上がり を実現し車内を広く保つという 「人の快適性」という、相反する二つの 要素を繋ぐラストピースなのです。 ゆりかもめ7300系で初採用されたこの 技術は、その後、ニューシャトル、 日暮里・舎人ライナー、アストラム ラインなど、全国のAGTへと広がって います。 限られた空間を機械のためではなく 「人のため」に開放する。 この22mmの革新は、今日も都市の空を 少しだけ広く、そして明るく照らし 続けています。 次回のAGTブログもお楽しみに!
- 都市を呼吸させる「60km/h」の鼓動 ― 効率と優しさを両立するAGTの最適速度
AGT研究所の増川です。 AGTブログへ、ようこそ。 今回取り上げる話題は 都市を呼吸させる「60km/h」の鼓動 ― 効率と優しさを両立するAGTの最適速度 です。 鉄道と比べると、AGTの「最高速度 60km/h」という数字は少し控えめに 感じるかもしれません。 しかし、実際に先頭車両に座って街を 駆け抜けてみると、そこには数字以上の 「速さ」と、小気味よい「リズム」が あることに気づきます。 日本のAGT路線の平均駅間距離は、 約890mです。駅を出て最高速度まで 一気に加速したかと思えば、心地よい 重力を感じながらすぐに次の駅への 減速が始まります。 この「フル加速と即減速」のキビキビと した反復は、重厚な鉄道車両には 真似できない、身軽なAGTならではの 軽快なステップであり、都市の鼓動 (パルス)そのものです。 なぜ、あえて60km/h以上の速度を 目指さないのでしょうか。 それは、都市を走る軽量なシステムと して、最も経済的な運行を追求した 結果です。 一般的な電車用モーターは時速40km/h 付近から加速する力が低下し始め、 さらに空気抵抗も速度の2乗に比例して 増大していきます。 駅間が約900mという短い区間において、 これらの物理的な制約と「車体の軽さ」 を天秤にかけ、最もエネルギー効率を 最大化できるポイントを探ると、 自ずと60km/hという「黄金のバランス」 が導き出されるのです。 スピードを追求して駅を遠ざけるのでは なく、あえて速度を抑えて街に細かく 駅を配置し、誰もが気軽に移動できる リズムを守ること。 60km/hという穏やかな速度は、 車窓から街の表情を楽しみ、 市民の生活リズムに寄り添うための AGTの誠実な選択なのです。 次回のAGTブログもお楽しみに!
- 鉄道の常識を脱ぎ捨てた「一方向」の美学 ― ピーチライナーが挑んだ、究極のコスト低減
AGT研究所の増川です。 AGTブログへ、ようこそ。 今回取り上げる話題は、 鉄道の常識を脱ぎ捨てた「一方向」 の美学 ― ピーチライナーが挑んだ、 究極のコスト低減 です。 ピーチライナーの車両を眺めると、 ある決定的な違和感に気づきます。 それは、鉄道車両が当然のように 備えている「前後どちらにも進める」 という汎用性を、潔く切り捨てている 点です。 主運転席は編成の一端にしかなく、 ドアも片側に集約された 「方向固定の非対称設計」。 この構造は、後戻りを想定しない、 いわば線路の上を走る 「軌道走行に特化したバス」としての 顔を持っていたのです。 終点駅に到着し乗客を降ろした列車は、 一般的な電車のように運転士が前後を 移動して折り返すのではなく、 駅後方のループ線をぐるりと 1 周し、 自ら向きを変えて再びホームへと戻って くるのです。 この旋回こそが、車両から余分な 運転台やドアを削ぎ落とすことを可能に した、ピーチライナーの運用システムの 心臓部でした。 なぜ、これほどまでに一方向性に こだわったのか。 その背景には、ニュータウンの足として 「いかに建設費と運営費を極限まで 抑えるか」という、公共交通の 持続可能性への執念がありました。 4 両編成の「連結バス」という 設計思想に、ユーカリが丘線に続き 日本で2番目の「センターガイド方式」 を組み合わせたこのシステムは、 従来の重厚な鉄道インフラとは一線を 画す、軽やかで合理的な都市交通の 実験だったのです。 2006 年に日本で唯一の廃線 (AGTブログ194参照)という苦い 記録を残しましたが、その設計思想は 今、形を変えて再評価されるべき時を 迎えています。 無駄を削ぎ落とし、特定の環境に 特化させることで効率を最大化する。 ピーチライナーが遺した 「一方向の合理性」という思想は、 これからの都市が求めるスマートな モビリティへの大きなヒントを今も 発信し続けています。 次回のAGTブログもお楽しみに!
- 足元の「第三軌条」が空を広げる ― AGTが実現した、視界を遮らない都市デザイン
AGT研究所の増川です。 AGTブログへ、ようこそ。 今回取り上げる話題は 足元の「第三軌条」が空を広げる ― AGTが実現した、視界を遮らない 都市デザイン です。 AGTの先頭車両に座り、前方の景色を 眺めてみてください。 そこには、一般的な鉄道にあるはずの 「空を切り裂く電線」も 「視界を遮る電柱」もありません。 視界の先に広がるのは、 真っ直ぐに伸びる軌道と、 どこまでも続く広い空。 この圧倒的な開放感を生み出している のは、車両の屋根の上ではなく、 実は「足元」に隠されたパンタグラフ なのです。 AGTでは、ワイヤー状の架線ではなく 「第三軌条」と呼ばれる板状の架線から 電気を取り込んでいます。 通常、鉄道の象徴ともいえる パンタグラフを車両の床下に配置した ことで、車両全体の高さを抑え、 スマートな外観を実現しました。 この「目に見えない場所」での 給電システムが、乗客の目に映る 「スッキリとした高架軌道」という 贅沢な景色を支えています。 かつて、銀座線や丸の内線などの 地下鉄で採用された第三軌条は、 線路に転落した際の感電という リスクを伴うものでした。 しかし、全自動無人運転のAGTは、 当初から天井まであるフルスクリーン タイプのホームドアをセットで導入しま した。 人間が物理的に軌道へ入り込めない 空間設計にしたことで、 第三軌条は「危険な技術」から 「景観と効率を両立する理想的な技術」 へと昇華されたのです。 まさに、第三軌条はAGTというシステム と出会うことで、その真のポテンシャル を解放されたといっても過言ではありま せん。 このシステムの信頼性は、 緊急時の連動にも現れています。 もしもの時、乗客が避難のために先頭の 非常扉を開くと、 無線システム(非常発報)によって 自動的に第三軌条の電源が落ちる 仕組みになっています。 足元の小さなパンタグラフが、 都市の空を市民に返し、 同時に目に見えない安全の網で私たちを 守っている。 AGTは、技術の連動によって 「優しく、美しい都市」を描き続けて いるのです。 次回のAGTブログもお楽しみに!











