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19件の検索結果が見つかりました

  • コラム_11 | AGT研究所

    AGTコラム AGTについて詳しくお伝えします コラム最新記事を表示 №11 群を抜いたAGTならではのスッキリ高架 2025/11/23  都市空間において鉄道や道路の高架構造は避けがたい存在ですが、その圧迫感や景観上の課題は常に議論の的となっています。近年は、駅前再開発や沿道整備において「高架下空間の活用」や「景観との調和」が重視されるようになりました。 AGT(Automated Guideway Transit)は、こうした都市の制約条件の中で、既存道路や河川上空などの限られた空間を有効活用する発想から誕生した新しい交通システムです。軌道の大部分が高架構造で構成されており、そのデザインは都市景観との親和性を考慮して設計されています。モノレールと並んで「空中交通システム」と呼ばれますが、実際に街中で見比べると、AGTの高架はひときわ軽やかでスッキリとした印象を与えます。本コラムでは、その理由を構造面から見ていきます。 1.鉄道の高架軌道下 在来鉄道や地下鉄延伸線などで見られる鉄道高架は、架線や電柱、レールを支える枕木・バラストが積み重なり、構造全体が重厚です。軌道桁も自重を支えるために厚みを増し、さらに防音壁が設けられると、地上から見上げた際に“連続した壁”のような印象を与えます。その結果、柱間隔は15メートル前後と密になり、高架下空間は薄暗く閉鎖的になりがちです。近年では耐震補強のための側壁や補剛材も追加され、圧迫感が一層増しています。 写真1 架線と電柱が林立する鉄軌道の高架 写真2 薄暗い鉄軌道の高架下 2. AGTの高架 一方、AGTの高架はまったく異なる構成をしています。架線や電柱が不要で、電力は車両床下の集電装置を通じ、走行路脇の第三軌条から供給されます。これにより、上部に余計な設備がなく、外観が極めてシンプルです。 写真3 スッキリ度の高いAGTの高架 さらに、ゴムタイヤで走行するため防振構造やバラストが不要で、走行路はコンクリート床板と同レベルか、高さ250ミリのコンクリート桁を使い分けています。構造重量は鉄道高架の半分以下で、柱の間隔もおよそ30メートルと広く取ることが可能です。柱が少ない分、地上部には光が届きやすく、街並みに開放感が生まれます。 また、軽量な構造、柱の本数が少ないゆえに基礎工事が小規模で済み、都市中心部でも施工期間を短縮できます。桁内部には電力ケーブルや信号線が収められており、維持管理時も高所作業を最小限に抑えられる設計です。走行音や振動も少なく、高架下を歩いても会話を遮るような騒音を感じにくい点も、AGTならではの特長です。 写真4 軌道下にも光が注ぐAGTの高架下 写真5 AGTの第三軌条 写真6 コンクリート走行路 3.モノレールの高架 AGTとよく比較されるのが跨座型モノレールです。コンクリート製の走行桁が2本並ぶ形は一見スリムですが、車両が桁の上にまたがって走る構造上、日本の標準の桁の高さ1.5メートルに対し柱間隔は20メートルとやや密になります。柱の数はAGTの約1.5倍。外観上は軽やかに見えても、都市景観への影響はむしろ大きくなる傾向があります。 写真7 モノレールの高架 写真8 支柱が林立するモノレールの高架下 国内のモノレールには非常通路が設置されていませんが、海外では多くの路線に設置が義務付けられています。写真にあるように非常通路付きの高架軌道の幅はかなり広がり、見た目、AGTの軌道幅とあまり変わらない感じです。 写真9 モノレールの非常通路 4.高速道路の高架 高速道路の高架はさらにスケールが大きく、幅員が20メートルを超える場合も珍しくありません。防音フェンスや照明ポールが並び、構造全体が閉じた印象を与えます。車両通過時の騒音・振動も大きく、高架下は歩行者が敬遠しがちな空間となります。これに対し、AGTの高架は幅約6メートル、高さ約1.5メートルと非常にコンパクト。外観上も整然としており、周囲の街並みを遮らない“細身の構造”が印象的です。 写真9 高速道路の防音フェンスと照明ポール 5.まとめ この「軽やかな高架」は、単なる構造上の違いではありません。AGTが都市交通として小断面・軽構造・静粛性を追求して設計された成果です。建築物や道路橋と調和するよう、桁形状や色彩にも配慮がなされ、橋脚や桁端部のデザインにも地域性を反映させる事例が増えています。 都市の中で“見せる高架”を実現している点こそ、AGTのもう一つの価値といえるでしょう。 ビルの谷間をすり抜けても圧迫感がない――。 そのスッキリとした高架こそ、AGTが都市景観と共存するための最適解であり、21世紀型の都市交通インフラの姿を象徴しています。 コラムi一覧へ戻る

  • AGTの秘密と魅力 | AGTの総合ガイド | AGT研究所

    都市交通の未来を形作る新交通システム(AGT)の秘密、技術、そして世界への影響を分かりやすい言葉で解説します。AGTがどのようにあなたの街を変革するかをご覧ください | AGT研究所 AGT の 魅力と 仕組みと 秘密のはなし AGTとは AGT(Automated Guideway Transit)は、 「新交通システム」とも呼ばれているゴムタイヤで走る中量輸送システムです。 日本では 10 のAGT路線 が毎日 50 万人以上を運んでいます。 10 路線のうち 6 路線が全自動無人運転で、4 路線が有人運転です。 ゴムタイヤ 全自動無人運転 低騒音、低振動 最小回転半径 30m アンカー 1 新着ブログ 日本のAGTはなぜ「乗り心地が良く経済性が高い」のか?―台車方式の違いから見える設計思想― AGTは世界各地にありますが、その「足もと」である台車の構造には、国ごとの考え方の違いがはっきり表れていて、この違いこそが乗り心地や経済性を大きく左右しています。 アメリカでは中央に1本のガイドレールを置き、それを両側の案内輪で挟む「センターガイド方式」。 ヨーロッパではガイドレールを左右に設けて案内輪を常に密着させて走る「サイドガイド方式」が主流です。 日本のAGTは、サイドガイド方式ですが、直線区間では案内輪がガイドレールに密着せず、数ミリのすき間をあけたまま走行するように設計されていて、省エネと長寿命に優れているのが特徴です。 AGT全般 6 時間前 読了時間: 2分 ブログ全文を読む 新着コラム №11 群を抜いたAGTならではのスッキリ高架 2025/11/23 都市空間において鉄道や道路の高架構造は避けがたい存在ですが、その圧迫感や景観上の課題は常に議論の的となっています。近年は、駅前再開発や沿道整備において「高架下空間の活用」や「景観との調和」が重視されるようになりました。 AGT(Automated Guideway Transit)は、こうした都市の制約条件の中で、既存道路や河川上空などの限られた空間を有効活用する発想から誕生した新しい交通システムです。軌道の大部分が高架構造で構成されており、そのデザインは都市景観との親和性を考慮して設計されています。モノレールと並んで「空中交通システム」と呼ばれますが、実際に街中で見比べると、AGTの高架はひときわ軽やかでスッキリとした印象を与えます。本コラムでは、その理由を構造面から見ていきます。 1.鉄道の高架軌道 在来鉄道や地下鉄延伸線などで見られる鉄道高架は、架線や電柱、レールを支える枕木・バラストが積み重なり、構造全体が重厚です。軌道桁も自重を支えるために厚さをを コラム全文を読む コラム記事一覧を表示 https://www.agtinstitute.info/%E8%A4%87%E8%A3%BD-%E3%82%B3%E3%83%A9%E3%83%A0-09 https://www.agtinstitute.info/%E8%A4%87%E8%A3%BD-%E3%82%B3%E3%83%A9%E3%83%A0-09 掲載記事 日本鉄道施設協会誌8月号 シリーズ「鉄道施設インフラの海外展開」㉜ AGT・APMの海外展開の取り組み 2023/08/02 掲載記事を読む 記事一覧を表示

  • コラム | AGT研究所

    AGTの特徴をコラム形式でご紹介するページです。 コラム1:都市部の公共交通におけるAGTの位置づけ コラム2:専用軌道システムとしての意外な一面 コラム3:AGTの輸送量についての意外な一面 コラム4:ゴムタイヤ車両の特徴 コラム5:AGTの全自動無人運転 コラム6:低騒音、低振動 コラム7:AGTの路線パターン コラム8:価値あるAGT単線軌道 コラム9:AGTの軌道と道路の関係 コラム10:AGTの駅構造 AGTコラム AGTについて詳しくお伝えします コラム最新記事を表示 コラム最新記事を表示 №01 都市部の公共交通におけるAGTの役割 №02 専用軌道システムとしてのAGTの特徴とは №03 AGTの輸送量についての意外な一面 №04 ゴムタイヤ車両の特徴 №05 AGTの全自動無人運転 №06 優れたAGTの低騒音、低振動 性能 №07 AGTの路 線 パ ターン №08 AGTの単線路 線 №09 AGTの 軌道と道路の関係 №10 AGTの 駅構造 №11 群を抜いたAGTならではのスッキリ高架

  • コラム_09 | AGT研究所

    AGTの特徴をコラム形式でご紹介するページです。 コラム_09では、日本のAGTの軌道と道路の関係について解説しています。 AGTコラム AGTについて詳しくお伝えします コラム最新記事を表示 №09 AGTの軌道と道路の関係 2023/11/22 1.日本のAGTのルーツ 都会の道路の上方の空間を使って、地下鉄よりも少ないコストで高架専用軌道を建設するというコンセプトで開発されたのが日本のAGTです。 フランスのAGTは、地方都市の地下鉄を、トンネル径を小さくすることにより低コストで建設することをコンセプトとして開発され、レンヌ、トゥールーズ、リヨンの3都市に6路線の地下鉄が建設されています。 日本のAGT路線は、大きく分けて2種類の形態に分けることができます。 一つは、ポートライナー、六甲ライナー、ニュートラム、シーサイドライン、ゆりかもめ、ピーチライナーのような人工島や埋め立て地、そしてニュータウンなどと主要鉄道駅を結ぶ軌道系交通、もう一つは、酷い渋滞を引き起こしているバス路線を軌道系交通によって通勤通学の定時性、速達性を確保するための路線で、アストラムライン、日暮里・舎人ライナーがそれにあたります。 渋滞解消を目的とした路線は、渋滞を引き起こしている道路の中央分離帯に支柱を立ててその上に軌道が載っていますが、人工島や埋め立て地の路線は、道路だけでなく、公園や広場など総合的な都市計画に基づきルートが計画されているのが特長です。 2.実路線のパターン化とその割合 日本では廃線になったピーチライナーを含めて全部で11のAGT路線が建設されましたが、1985年開業の西武山口線は西武の遊園地、ゴルフコースに沿った路線であること、1983年開業のニューシャトルは新幹線と軌道構造を共有している点などからこの2路線は除外し、今回の検討の対象路線は全部で9路線としています。 軌道位置をパターン化すると、 1.自動車道の中央分離帯に柱を立て、その上に軌道を設置したもの 2.自動車道の片方の歩道の外側に柱を立て、その上に軌道を設置したもの 3.護岸工事がなされた川沿い、海岸沿いに柱を立て、その上に軌道を設置したもの 4.団地内、公園内、広場内に柱を立て、その上に軌道を設置したもの 5.専用の高架橋をもつもの 以上5パターンで駅間軌道数を数え比較した結果を表1に示します。 対象9路線の全駅間数は99あります。そのうち中央分離帯に柱を立てて軌道を配置する(アストラムは3区間が地下)日本のAGTのコンセプトに沿った軌道は61あり、62%を占めます。その次に多いのが歩道脇に柱を立てて軌道を設置する方法で22%を占め、合計で84%が道路沿いに建設されていることがわかります。 3.渋滞解消を目的とした路線 2008年に開業した日本で最も新しいAGTである日暮里・ 舎人ライナーは、前述したAGTのコンセプト通りに、尾久橋通りの中央分離帯の上に柱を立ててその上に13駅、9.7㎞の高架軌道が敷かれています。荒川を渡る区間だけ、専用の橋を建設したので尾久橋通りからそれますが、それ以外はコンセプト通りです。 1994年に開業した広島のアストラムラインも、起点の本通駅から中筋駅までの10駅、7kmが祇園新道に沿って建設され、そのうち4駅が半地下を含む地下鉄、6駅が中央分離帯に柱を立ててその上に高架軌道を設置しています。 祇園新道を外れてからも、県道38号線上の上に高架軌道が置かれ、コンセプト通りの構造が続きます。 日暮里・舎人ライナーの尾久橋通りとアストラムラインの祇園新道は、長い間、朝晩の渋滞が激しく、バス便の定時性が問題となっていました。 AGTの開通により、酷い渋滞が解消され、通勤通学者にも定時性が確保されました。 4.人工島、埋め立て地の路線 1981年、日本初のAGT、ポートライナーは、三宮沖に建設された海上都市ポートアイランドの主幹交通として当初から計画に織り込まれていた路線です。 陸側の三宮駅と貿易センタービル間は国道2号線の中央分離帯の上に柱を立てた高架軌道ですが、島内はポートアイランド内の十分余裕をとった幹線道路沿いに緑地帯、自動車道、AGT高架軌道を横に並べた余裕のあるレイアウトにしています。 ニュートラムは、全9駅間のうち6駅間が自動車道路の中央分離帯に柱を立てた高架としています。コスモスクエア駅側の2駅分が歩道の外側で、ポートタウン西駅と東駅間が団地内を横切るルートとなっています。 1991年に開業し、2005年に廃線となった桃花台線も、約7割が中央分離帯上の高架軌道ですが、団地側の約3割の区間が歩道沿いの高架となっています。 1995年開業のゆりかもめの埋め立て地側は、中央分離帯上に高架軌道を設け、合理性を優先したレイアウトになっています。 5.道路と縁の薄い軌道 六甲アイランドの六甲ライナーの軌道は、起点の住吉駅から南魚崎駅間は、魚住川の川岸に柱を立てた高架軌道、島内は、細長い広場の中心に柱をたてて高架軌道と高架駅を建設し、道路と関連性の薄い路線が特徴的です。 横浜シーサイドラインは、道路沿い軌道の8駅間に対し、金沢八景側の5駅が海岸沿い2駅間、公園内3駅間と海との親和性の高い路線となっています。 6.まとめ 9路線のAGTの路線と道路の関係を見てきましたが、六甲ライナーを除き、基本的に日本のAGTは道路に沿って路線が計画されています。 ポートライナーは、2006年に神戸空港までの延伸が行われ、ゆりかもめも2006年に豊洲まで延伸されました。 このように、道路がある限りAGT路線は延伸が可能なシステムです。 コラムi一覧へ戻る

  • コラム_10 | AGT研究所

    都市交通の効率化と快適性を追求するうえで、AGTの駅構造は重要な要素です。本コラムでは、AGTの駅構造に焦点を当て、その特徴と利点を解説します。 目次 1.日本のAGTの駅構造 2.プラットホーム形式 3.途上国向け駅構造 4.コンコース無しの対向式プラットホーム AGTコラム AGTについて詳しくお伝えします コラム最新記事を表示 №10 AGTの駅構造 2025/03/31  都市交通の効率化と快適性を追求するうえで、AGTの駅構造は重要な要素です。本コラムでは、AGTの駅構造に焦点を当て、その特徴と利点を解説します。 1.日本のAGTの駅構造  日本のAGTの多くの駅は、1階が道路の中央分離帯とその中に建てられた複数の柱、2階にコンコース、3階に島式のプラットホームを配置した3層構造になっています。 写真1a 代表的なAGTの3層構造駅 写真1b 中央分離帯に建てられた駅を支える柱  1981年に開業した日本で最初のAGTであるポートライナーから、ニュートラム、シーサイドライン、六甲ライナー、ゆりかもめ、日暮里・舎人ライナーの全ての全自動無人運転の路線が、この3層構造で島式プラットホームの駅を採用しています。  道路の中央に高架軌道を設けることが多いAGTは、駅も道路の中央に設置されます。 駅では道路の両側の歩道から利用者を一旦コンコース階に上げ、中央の改札口から更に上にあるプラットホームに上げる役割をコンコース階は果たしています。 そのため、AGTとコンコース階は切ってもきれない関係にあると言えます。 写真2コンコース階の改札口 2.プラットホーム形式    ゆりかもめは写真4a、4bの竹芝駅を除き全ての駅が写真3a、3bの島式プラットホームを採用していますが、写真4a、4bの対向式のプラットホームに比べプラットホームの幅が広くとれるのが特長です。 写真3a 島式プラットホーム駅 写真3b 島式プラットホーム 写真4a 対向式プラットホームの竹芝駅 写真4b 竹芝駅の対向式プラットホーム  島式プラットホームはまた、不案内の乗客が方向を間違えてプラットホームに上がっても、一旦コンコース階まで降りて反対のプラットホームに移動する必要がなく、対向式プラットホームに比べてユーザーフレンドリーな構造といえます。観光客の多いゆりかもめのような路線にはうってつけです。  AGTで対向式プラットホームを採用している路線は、1983年開業のニューシャトル、1982年開業のユーカリが丘線、1985年開業の西武山口線の3路線しかありません。しかもこれらの駅はコンコース階なしの簡素な構成です。  その後、コンコース付きの駅が主流となったのは、1986年ごろに始まったバブル景気の動きに合わせ、設備が高級化していった影響があると考えられます。 3.途上国向け駅構造  BRTやLRTより輸送量が多く、鉄道よりは建設費が少なくて済むAGTの導入検討を途上国から求められた際、日本で一般化しているこの建設費のかさむコンコース付き駅がネックになります。コンコース付き駅の建築費は、土木建築費用全体の20%前後を占めるほど大きな割合です。そこでコンコース付き駅の代わりにコンコース無し駅の出番です。コンコース階がまるごとなくなるので、建設費をかなり抑えることができます。 更に、プラットホームを対向式プラットホームにすることによって途上国特有の問題を解決することができます。日本でも高度成長時代に都市の鉄道のあちこちで編成車両の増加に伴うプラットホーム延長が必要になりました。人口増加のスピードが速い途上国ではこの列車長を長くする必要が高い確率で起こるため、プラットホームの延長が可能な対向式プラットホームが向いています。 島式プラットホームではプラットホームの延長は困難なためです。 4.コンコース無しの対向式プラットホーム 日本のAGTでコンコース無しの対向式プラットホームを採用している路線としてニューシャトルがあります。  1983年に開業したマニュアル運転の路線ですが、低コストをコンセプトに設計・建設されましたので、途上国にマッチした仕様に溢れています。 写真5a 対向式プラットホームでコンコース無しの駅 写真5b 対向式プラットホームでコンコース無しの駅  写真5a、5bにあるように地上階とプラットホーム階がエレベータと階段で直接つながっています。  地上では、写真5cのような簡易型の改札が使われています。 写真5c コンコース無し駅の地上部にある簡易改札口  ニューシャトル以降、日本でコンコース無しの対向式の駅が採用されなくなった理由は、バブル景気による高級化だけでなく、同じころ、バリアフリー化が重要視されるようになり、エレベータが必須となりました。そうなると島式のプラットホームはエレベータ設備が1機で済みますが、対向式の場合は2機必要となります。ところが、コンコース付き駅ですとコンコースと上のプラットホームに1台、コンコースと両歩道の間に2台、合計3台のエレベータが必要となります。それに対し、対向式では、上下線プラットホームと地上との連絡に2台のエレベータで済みます。  バリアフリー上、エレベータは必須な設備ですが、エレベータがあればエスカレータは省略可能です。  このような理由で途上国向けの駅の形式として需要増大に簡単に対応できるコンコース無しの対向式プラットホームの簡便な構造が推奨されるようになってきています。 コラムi一覧へ戻る

  • コラム_07 | AGT研究所

    AGTの特徴をコラム形式でご紹介するページです。 コラム_07では、日本のAGTの3つの路線パターンについて解説しています。 AGTコラム AGTについて詳しくお伝えします コラム最新記事を表示 №07 AGTの路線パターン 2023/5/16 1.AGT大国、日本 日本には1981年に運行開始したポートライナーを筆頭に、 2008年の日暮里・舎人ライナーに至るまで、全部で10のAGT路線があり、毎日58万人(2019年統計値)を超える人々が利用しています。 日本の次にAGTの路線が多いのはフランスです。リール市、トゥールーズ市、レンヌ市に6つのAGT路線があり、毎日約30万人が利用しています。日本のAGTは、路線数、利用者数共に2位のフランスを大きく離し、世界ナンバーワンで、日本はAGT大国といえます。 2.3つの路線パターン 日本のAGTの路線のパターンは大きく分けて3つのパターンに分けられます。 一つ目は、鉄道の主要駅から郊外に延びる路線です。 二つ目は二つの異なる鉄道路線の駅をつなぐ路線です。 三つめは、鉄道の主要駅から出て周辺を巡ってまた同じ駅に戻る団地の循環バスのような路線です。 3.支線 1つ目の路線パターンは、主要駅の鉄道を本線とすると「支線」という言い方をされるものです。 鉄道の主要駅を基点として、新しく開発された地域の主要交通手段を担う働きをしています。 運行開始が早い順にご紹介しますと、1981年開業のポートライナーは、8.2km、12駅、毎日の利用者は約8万人の路線です。 神戸の中心にある三宮駅を起点とし、神戸の海を埋め立てて造ったポートアイランドの主要交通機関です。 ポートアイランドには、4つの大学のキャンバスや、先端技術研究所、先端医療施設などがあり、ピーク時間帯は26本、オフピーク時間帯でも15本の列車が三ノ宮駅を発着しています。 写真の赤い橋は、六甲山麓にある神戸とポートアイランドを繋ぐ神戸大橋です。 支線の2つ目は1983年開業のニューシャトルで、12.7km、13駅、毎日の利用者は約5万2千人の路線です。 1日の利用者数が20万人の大宮駅を起点とし、埼玉県のなかでも人口増加の多い新興住宅地の主要交通機関です。 ニューシャトルは 写真に見られるように東北新幹線、上越新幹線の軌道脚を利用した構造に 特徴があります。 支線の3つ目は、1990年開業の六甲ライナーで、4.5km、6駅、毎日の利用者は約3万5千人の路線です。魚崎駅で阪神本線とも接続しています。 ポートライナーの起点の三宮駅から東に約7㎞離れた住吉駅を起点とし、海を埋め立てて造られた六甲アイランドの主要交通機関です。 AGTの高架軌道は、近代的な建物、街並みによくフィットしています。 支線の 4つ目は、1994年開業のアストラムラインで、18.4km、22駅 、毎日の利用 者は約6万6千人の路線です。 広島の本通駅を起点とし、再急勾配4.5%の急坂を登りながら広島市の北西部に広がる台地の住宅街の主要交通機関です。 新白鳥駅で山陽本線と、大町駅で可部線と接続しています。 日本最長のAGT路線であり、更に5.9%勾配のある7.1㎞の延伸を計画しています。 支線の5つ目は、2008年開業の日暮里・舎人ライナーで、9.7km、13駅、毎日の利用者は約9万1千人の路線です。 日暮里駅を起点とし、埼玉県との県境までの住宅地を通る路線で、西日暮里で東京メトロ千代田線、JR山手線、京浜東北線、宇都宮線と、熊野前駅で都営荒川線と接続しています。 日暮里・舎人ライナーが建設された尾久橋通りのバス路線は、激しい渋滞により通勤、通学時間が不規則で時間がかかっていましたが、AGTの運行開始により正確な運行時間と通勤時間短縮をもたらしました。 4.接続線 二つ目の路線パターンは、二つの異なる鉄道路線の駅をつなぐAGT路線です。 この路線パターンは、両端が鉄道駅と繋っていて、沿線には、大規模団地、工業団地、商業ビルなどが集まり、鉄道駅間の地域の価値を高めています。 まずは、1981年開業の南港ポートタウン線があげられます。 中央線のコスモスクエア駅と四ツ橋線住之江公園駅を結ぶ7.9km、10駅、毎日の利用者が約7万4千人の路線です。 コスモスクエア駅側には貿易センターを中心とするビジネスエリア、住之江公園駅側には工業団地、中間には南港ポートタウンの住宅団地が組みあわされており、朝のピーク時間帯は、地域から出る人々と地域に働きに来る人で上下線とも混雑する路線です。 接続線の2つ目は、1985年開業の西武・山口線です。 西武鉄道多摩湖線終点の多摩湖駅と狭山線終点の西武球場前駅を結ぶ2.8km、3駅の路線です。中間は西武園遊園地となっています。西武球場で試合やイベントが開催されるときは満員の乗客を運びます。 接続線の3つ目は、1989年開業の横浜シーサイドラインです。 JR京浜東北線の新杉田駅と京浜急行の金沢八景駅を繋ぐ10.8km、14駅、毎日の利用者が約5万2千人の路線です。 路線の南側には工業団地、北側には住宅団地が広がり、朝のピーク時間帯は地域から出る通勤通学の人々と地域に働きに来る人で上下線とも混雑する路線です。 接続線の4つ目は1995年開業のゆりかもめです。 新橋駅と有楽町線の豊洲駅を繋ぐ14.7㎞、16駅、毎日13万人が利用する路線です。 汐留駅で都営地下鉄大江戸線と、有明駅で臨海線と接続しています。 お台場の観光スポットや東京ビッグサイトを訪れる人の利用が多く、定期券利用者より、正規料金の収入が多い路線です。 片方が鉄道駅ではありませんが、三宮駅を起点とする支線としてご紹介したポートライナーは、神戸空港とつながっていて接続線の一種とも言えます。 5.循環線 三つ目の路線パターンは、鉄道の主要駅から出発して団地内を一周して元に戻るという循環バスのような路線です。 まずは、1983年開業のユーカリが丘線です。 京成線のユーカリが丘駅を起点とする単線4.1km、6駅、毎日の利用者が約2千人のコンパクトでシンプルな路線です。 2つ目は、三宮駅を起点とする支線としてご紹介したポートライナー線です。 市民広場駅で分岐し、島内を巡り三ノ宮駅に戻るという6.4km、9駅の一部単線区間を含むルートです。 国内では数の少ない循環路線ですが、バスに比べ時間が正確な点、信号待ちがないので早く目的地に着く点などが評価され、シンガポールでは ブキットパンジャン、 センカン、 プンゴル の3つの高密度の大団地の質の高い公共交通を担っています 6.まとめ 以上、支線パターンが5路線、接続パターンが4路線、循環パターンが2路線(ポートライナが重複)をご紹介しましたが、これらは、開業後に延伸工事を行った後の現在の姿による分類です。 延伸工事前のオリジナルの状態では、支線パターンが南港ポートタウン線とゆりかもめの2路線を加えた7路線、接続線パターンが西武山口線と横浜シーサイドラインの2路線と圧倒的に支線パターンが多いシステムでした。 それが、その後の延伸によって接続線に進化し、利便性を高め、乗客数を伸ばしています。 現在支線パターンとなっているアストラムラインも将来、JR山陽本線の西広島駅への延伸によって接続線パターンになる予定です。 このようにAGTの路線に延伸が多いのはAGTが、道路さえあれば延伸工事が可能な点が大きな特徴のシステムであることを実証しています。 コラムi一覧へ戻る

  • コラム_01 | AGT研究所

    AGTの特徴をコラム形式でご紹介します。 コラム01では、AGTの専用軌道システムの特徴を解説しています。 AGTコラム AGTについて詳しくお伝えします コラム最新記事を表示 №01 都市部の公共交通におけるAGTの役割 2022/4/15 通勤に使う電車やバスが3 分ごとに来るのと、6 分ごとに来るのとでは、 3 分ごとの方がいいに決まっていますよね。 バスの場合、3 分間隔運転ができるように必要な台数を揃えるだけではなく 台数分の運転手を揃える必要があります。 電車の場合でも、必要な編成数とそれに応じた運転士を確保する必要があります。 AGTの場合は、全自動無人運転ですので、運転士の確保と管理に気を遣う必要がなく、需要に合ったサービスを供給することが出来ます。 運転士の確保の問題だけでなく、AGT は鉄道に比べ、建設費の面でも優位性があります。 都市部の公共交通は、大きく分けると、鉄道のような「軌道系交通」と、 バスやタクシーのような「非軌道系交通」に分類されます。 (図1) 「軌道系交通」は、大量の利用者の線の移動を高速かつ正確に行い、 「非軌道系交通」は、軌道系交通の駅を基点に 面の移動 を担うのが理想的な姿です。 「軌道系交通 」は、更に「専用軌道系」と「非専用軌道系」に分けられ ます。 (図2) 鉄道が整備される前は、バスが 線の移動 を担っていましたが、交通渋滞により移動時間がかかる、時間が正確でないなどにより発生する経済的損失が大きくなり、次第に「非専用軌道」のバスから「専用軌道」の鉄道に置き換わってきました。 路面電車は「軌道系」ですが、バスや自動車と道路を共有する「非専用軌道系」 の一種 です。 路面電車は「軌道法」により時速40キロメートルの速度制限を受けますので、道路側の自動車の制限速度と違うことに起因する事故や渋滞の影響を受けたり路線バスより時間的に不利といった特徴があります。 「専用軌道系」 には 地上 と 高架、そして地下の 3 種類があります。 (図3) 都市では、踏切の存在が事故や渋滞の要因になるため、これから建設する路線で地上軌道は考えられません。 高架軌道についても、土地の確保が困難なため、地下鉄にせざるを得ません。 「専用軌道」のなかでも AGT は、既存の道路上の空間を使うことが出来ますので、鉄道に比べ、土地の確保が楽であるため、地下鉄の約3分の1程度の費用で建設できるという利点があります。 日暮里・舎人ライナーは、日暮里駅を出てから終点の見沼親水公園駅まで、 尾久橋通り上を高架軌道が続いています。 1980年以降、ポートアイランド、六甲アイランド、大阪南港、お台場など 神戸、大阪、東京の人工島と陸を繋ぐ島内の主幹交通としてAGT が導入され、広島のアストラムラインや東京の日暮里・舎人ライナー線には渋滞によるバスの遅延問題解決のため、 AGT が導入されました。 広島の祇園通りの渋滞は、AGT 建設前に 3.2 キロ だったのが建設後に 2.5 キロ と 2 割減少しました。 AGT がそんなによいものだったら、なぜもっと AGT の路線がないのか という疑問をお持ちかもしれません。 2009 年から人口減少に 入った 日本では、2005 年のつくばエクスプレスを最後に、新幹線を除いて大きな鉄道路線の建設は少なくなり、 そのかわりに AGT、モノレール、リニア地下鉄の 3 種類のシステムの路線が鉄道に代わり建設されてきました。 (図4) AGT、モノレール、リニア地下鉄の中でも、建設費が安く、全自動無人運転ができるのはAGT の大きな特徴です。 既存の道路の上空を有効に使い、 安全性、 速達性、 定時性 に優れた専用軌道の AGT は、都市交通の代表的システムとして日本で10 路線が運転され、毎日 58 万人以上の人々が利用しています。 世界では、31 の都市向け AGT 路線があります。 その 3 分の 1 が日本にあり、日本はAGT 大国といえます。 コラム一覧へ戻る

  • Agt研究所について | Agt研究所

    AGT研究所(AGT Institute)は、 AGT(新交通システム)の魅力や特徴について、 交通関係者だけでなく広く一般の方にも、 AGTにまつわるさまざまな話題をお伝えするブログと AGTの特徴について詳しくお伝えするコラムで、 知っていただくために設立された研究所です。 AGTに研究所ついて AGT研究所(AGT Institute)は、 交通関係者だけでなく、広く一般の方にAGTについて知っていただくために、 増川正久が主宰者となり設立した研究所です。 一般の方にAGTについて知って頂くために、 AGTにまつわるさまざまな話題をブログとして毎週発行します。 また、AGTの特徴についてお伝えするコラムを隔月発行します。 皆様からのAGTに関するご質問にも、できる限りお答えできればと考えています。

  • ご意見 / お問い合わせ | Agt研究所

    皆様からのAGTに関するご質問にできる限りお答えいたします。ブログ、コラムに関するご感想でも結構ですのでお寄せください。お待ちしております。 姓 名 Email ご記入欄 ありがとうございました。 送信 コンタクト ご意見 / お問い合わせフォーム

  • コラム_08 | AGT研究所

    AGTの特徴をコラム形式でご紹介するページです。 コラム_08では、AGTの日本国内の単線路線の特徴を事例を交えてご紹介します。 AGTコラム AGTについて詳しくお伝えします コラム最新記事を表示 №08 AGTの単線路線 2023/8/2 1.日本の単線AGT路線 10路線ある日本のAGTのなかで、ユーカリが丘線と西武山口線の路線が単線軌道で、残りの8路線が複線軌道です。 8つの複線路線のなかには、ニューシャトルとポートライナーのように複線と単線が混じっている路線があります。 ユーカリが丘線と西武山口線は、1日の利用者が2千から3千人の小規模な路線で、単線でも十分、需要を満足させることができています。 ユーカリが丘線の路線は、ラケット型をしていて、柄の付け根の部分にあたる公園駅で車両が行違うようになっています。 西武山口線の路線は、両終点駅を車両が同時に出発して、中間の信号所で行違うようになっています。 一方、ニューシャトルは、大宮寄りの9駅間が複線で、残りの4駅4.5kmが単線の組み合わせになっています。 単線の4駅全てが行違い可能駅になっており、ゴムタイヤを使ったAGTの加減速の良さを生かして駅間を全速力で走り、複線にも引けを取らない輸送力を得ています。 ポートライナーは、市民公園駅から中埠頭駅を通って中公園駅に戻る3駅2.6kmが単線軌道になっています。 ポールとその先端の旗のような形をしたポートライナーの路線は、旗の部分が単線で、ポールの部分が複線という組み合わせになっています。 中公園駅前の単線と複線の接続部は単線軌道が複線軌道を乗り越えてから複線軌道に合流するという、きついカーブと勾配の組み合わさったAGTならではの線形です。 2.単線・複線混合路線 さほど多くない輸送量に見合ったユーカリが丘線や西武山口線の単線路線は、軌道構造もAGTで一般的な高架軌道ではなく地上軌道で建設され、建設と運営・保守のコスト低減が徹底されています。 それに対し、ニューシャトルやポートライナーの単線・複線混合路線は、一部に単線区間を用いながら、全線複線路線にひけをとらない輸送量を確保するための工夫がなされています。 新幹線の軌道を離れ、独自の軌道となっているニューシャトルの丸山と終点の内宿の間の単線区間は、開業時に路線の末端側の沿線開発が進んでいなかったため、建設費や路線保守費の負担低減のために単線とした路線ですが、駅間距離を1.1キロメーターに揃え、全駅で行違いができるようになっていて、ピーク時間帯とオフピーク時間帯で運転間隔が異なるのを、行違い箇所を変えて調整することができるようになっており、将来の輸送量増大の対応が可能になっています。 複線区間の新幹線軌道を利用した軌道構造といい、単線区間の輸送力の高さといい、ユニークさでは群を抜いています。 延伸計画が公表されているアストラムラインも、6駅7.1kmの延伸部を単線とする計画です。 懸垂型モノレールの湘南モノレールは、8駅6.6㎞の全線単線の路線ですが、行違い可能駅が全体の半分の4駅あり、7分間隔で1日3万人を余裕で運んでいます。 ポートライナーの単線が通る地域は、普通ですと路線バスによってカバーされますが、ポートライナーでは、単線を敷設して、輸送需要に応じた車両を単線区間に回すことで、建設費や路線保守費の負担軽減と住民の利便性を両立させる調整が可能になっています。 今回ご紹介した4つの単線路線のうち3路線は運転士によるマニュアル運転ですが、ポートライナーは全自動無人運転です。 たとえ有人運転であっても、ATCによって正面衝突などの事故が起こることはありませんが、地上軌道のユーカリが丘線や西武山口線は無理としても、全線高架軌道のニューシャトルは、全自動無人運転化が比較的簡単に可能です。 また、現在有人運転となっているアストラムラインも、地下鉄区間を除き、全自動無人運転化が可能です。 3.まとめ ニューシャトル型の単線は、AGTの加減速の良さを生かし、複線並みの輸送力の確保を狙ったもので、広島のアストラムラインの延伸路線計画に影響を与えています。 湘南モノレールの実績から明らかのように、毎日の利用者が3万人程度の路線であれば、低コストで建設、運営が可能な全自動無人運転の全線単線のAGT路線が可能です。 ポートライナー型の単線は、幹となる複線の周辺に輸送需要の多い地域があった場合、AGTの小カーブと急勾配に強い特徴を生かした複雑な軌道形状を用いて、複線の任意の位置から単線軌道を分岐し、また任意の位置で複線に合流させることで定時性、速達性、安全性の揃った高いクオリティの輸送サービスを住民に提供することが可能です。 将来、ポートライナー型の単線の既存路線への適用提案ができればと考えています。 コラムi一覧へ戻る

  • コラム_03 | AGT研究所

    AGTの特徴をコラム形式でご紹介するページです。 コラム_03では、車両長が短いため輸送量が少ないと思われがちなAGTですが、リニア地下鉄にも引けを取らない実態をご紹介しています。 AGTコラム AGTについて詳しくお伝えします コラム最新記事を表示 №03 AGTの輸送量についての意外な一面 2022/8/3 1回目のコラムで、AGTが属する専用軌道系システムの特徴についてお伝えしました。 2回目では、その専用軌道系システムの中で、AGTの際立った特徴として 最小半径30mが曲がれることの意味についてお伝えしました。 鉄道やモノレールに比べてAGTは車両長が短いため、輸送量が少ないというイメージがついて回ります。 今回のコラムでは、AGTの輸送量についての意外な一面についてご紹介します。 1.リニア地下鉄とAGT 鉄道の一種に、トンネル径が小さいので、トンネルの建設費が節約できるという特徴をもつリニア地下鉄というシステムがあります。(写真1) 仙台の東西線、 東京の大江戸線、 横浜のグリーンライン、 大阪の長堀鶴見緑地線、今里筋線、 神戸の海岸線、 福岡の七隈線がそれです。 そのリニア地下鉄とゆりかもめ7300系の車体幅は変わらないのです。 (写真2、3) ゆりかもめの第1世代は、それまでのAGT車両より一回り大きくなっていましたが、ゆりかもめの第2世代は、新型台車の採用、車体の大幅な軽量化等によって、リニア地下鉄並みの大きさの車両になりました。 (写真4,5) 2.2ドア車両の登場 ゆりかもめが1995年に運転を開始するまでのAGT車両は、車両長 8.0m、 車両幅 2.35m、ワンドアが標準仕様でした。 ゆりかもめは、車両長 8.5m、車両幅 2.5mと一回り大きくなり、ドア数も ツードアになって乗降時間が短縮され、輸送力がアップしました。 この形状は,ゆりかもめの次に開業した日暮里・舎人ライナーにも受け継がれました。 ところが日暮里・舎人ライナーは、沿線開発が想定を超えて急速に進み、混雑が酷い路線となっています。 列車の本数を増やし、混雑緩和の努力が続けられていますが、未だ解決には至っていません。 そのせいもあって、AGTは輸送力が低いシステムという論評が報道されたりします。 3.海外のAGT車両の大きさ 海外のAGTは、日本より10年早い1971年にAPM(Airport People Mover)として空港のメインターミナルとサテライトターミナルを結ぶ乗り物としてフロリダ州のタンパ空港で運行が始まりました。 (写真6) 話がそれますが、空港業界では、AGTのことをAPMと呼んで、都市交通のAGTと区別していますが、システムとしては同じものです。 空港のAPMは、飛行機から降りてきた大勢の乗客を一気に運ぶ必要があるため、輸送量は日本のAGTの約1.6倍あります。 その後、海外ではこの大きさの車体が都市内交通として適用されるようになり、海外での標準的な大きさとなりました。 このAPMの都市内交通の例として、シンガポールのブキットパンジャン線、センカンプンゴル線などがあります。(写真7、8) 日本でも三菱重工が車体長11.2m、車両幅2.8mのAGTを製作し、シンガポールのチャンギ空港はじめ世界7か国11空港にAPMを供給しています。 (写真9) 4.海外のAGT車両と丸の内線との比較 地下鉄丸の内線の車両は、車両長18m、車両幅2.78mで、6両編成ですが、三菱重工が製作した海外向けAGT車両も車両幅が2.8mあり、8両編成にすると丸の内線の編成と同じ輸送力があることになります。 車両長さが11.2mでは、最小カーブ30mを曲がれないのではとお考えの方もいらっしゃるかもしれませんが、車体が大きくなっても最小カーブ30mが曲がれるように設計されていますのでAGTの最大の特徴はキープされています。 丸の内線は、1日に約100万人の利用者がありますが、海外標準寸法のAGTは、丸の内線のような大量輸送の路線にも適用が可能なシステムと言えます。 5.まとめ 公益社団法人日本交通計画協会が2020年に制作した海外向けAGTのパンフレット(国土交通省監修)では、 (図1) AGTの車体の大きさを3タイプに分類し、 大型AGTをタイプA、 中型のツードアAGTをタイプB、 中型のワンドアAGTをタイプC として紹介しています。 Aタイプは1日の利用者が25万人前後、 Bタイプは15万人前後、 Cタイプは10万人前後 の路線で最も経済的に運行できる都市内交通システムとして推奨しています。 (図2) このようにAGTは、中量輸送だけでなく大量輸送にも適用できるフレキシブルなシステムなのです。 コラム一覧へ戻る

  • コラム_05 | AGT研究所

    AGTの特徴をコラム形式でご紹介するページです。 コラム_05では、AGTの自動運転システムの特徴について解説しています。 AGTコラム AGTについて詳しくお伝えします コラム最新記事を表示 №05 AGTの全自動無 人運転 2022/12/08 1.全自動無人運転の起源 AGTの起源は、1975年10月に米国で運行を開始したモルガンタウンPRT(Personal Rapid Transit)です モルガンタウンPRTは、20人乗りの小型の車両ですが、当初から全自動無人運転で運行されました。 日本でもその影響を受けて、車両メーカー各社が全自動無人運転の小型車両の開発を始めました。 1979年のオイルショックを経て1981年に運行開始したポートライナー線は、各社の試作車が小型の単車構成だったものから、経済性を優先させた6両編成の中型車両の電車構成になったものの、全自動無人運転の車両としてデビューしました。 ポートライナー初代(左)、現在(右) ポートライナーに続く2番目のAGTとして運行を開始した南港ニュートラムも全自動無人運転車両でした。 ニュートラム初代(左)、現在(右) その後日本では、六甲ライナー、横浜シーサイド、ゆりかもめ、日暮里・舎人ライナーの合計6つのAGT路線が全自動無人運転で運行されています。 上左:六甲ライナー、上右横浜シーサイド 下左:ゆりかもめ、下右:日暮里・舎人ライナー 2.鉄道の自動運転の取り組み こうして、日本では全自動無人運転の実績を40年以上積み重ねてきましたが、最近、ようやく鉄道でも自動運転の試験走行が始まりました。 AGTで40年も前に実現した全自動無人運転が、何故鉄道では今頃になって動き始めたのでしょうか。 鉄道の自動運転化が遅れた一番大きな理由は鉄道の場合、レールと車輪のすべり摩擦係数が晴天と雨天の場合に異なるため、駅で決まった位置に毎回きちんと止まりにくいことにあります。 AGTの場合、コンクリートの走行路の上をゴムタイヤで走りますので、雨天の場合も晴天と同じ精度で決まった位置に停止できる点が大きく違います。 鉄道の場合でも、地下鉄でしたら、雨の影響を受けないので、地下鉄では比較的早く、全自動無人運転が行われています。 シンガポールのノースイーストラインは、2002年にアジアで最も早く全自動無人運転が始まった路線です。 また、地下鉄でなくても、リニアモータを用いた車両を用いる路線では、制動距離が短い特徴を生かして地上路線でも全自動無人運転が行われています。 1998年に運転を開始したマレーシア クアラルンプールのKelana Jaya線がそれです。 この路線は、都心部が地下鉄でそれ以外は高架軌道となっています。 最近は、海外で地上路線の全自動無人運転が増えてきています。 ロンドンのドックランドラインはその一つです。 ドックランド線 レールと車輪の粘着係数だけでなく、車両の重量の変化も、定点停止精度に影響しますので、数多くのデータをとりながら、徐々に自動運転化を進めていく必要があります。 3.鉄道の無人化 AGTの自動運転は完全無人運転ですが、日本の鉄道の自動運転は有人の運転にとどまります。 AGTのプラットホームは屋根まであるプラットホームドアで完全に仕切られ、人が軌道内に入り込むことができなくなっていますが、鉄道は、人間が軌道内に立ち入る可能性があるため、運転士が軌道前方を見張る必要があるからです。 前方監視カメラによって障害物を検知しても鉄道はゴムタイヤのAGTより制動距離が長いため、より遠くの障害物を確実に検知することが要求されます。 更に、軌道に踏切があるような路線では、自動運転は可能でも完全無人転化は難しいでしょう。 そのため、運転士が運転台のスタートボタンを押すことで加速、減速し次の駅に自動的に止まるというものにとどまっています。 この方式をとっているのは、多摩都市モノレールやリニア地下鉄の七隈線などがあります。 日本では、6路線しか全自動無人運転路線はありませんが、海外では41のAPMと呼ばれる空港のゴムタイヤの路線が全自動無人運転の実績を誇っています シンガポールで全自動無人運転の地下鉄が20年も前に実用化されているのに、なぜ日本の地下鉄で全自動無人運転化が進んでいなのでしょうか。 それは、韓国の大邱地下鉄放火事件が2003年にあって日本では、地下鉄の無人運転化が許されていません。 そのため、自動化しても七隈線のように運転士が搭乗することになっています。 このように自動化しても無人運転化できないのであれば、かけたコストに見合うコスト削減が得られないため、自動化の機運が盛り上がらなかったためと思われます。 そんなわけで、地下鉄よりも先に全線高架の鉄道路線で全自動無人運転化が実現する可能性があります。 4.まとめ AGTは、世界で50年、日本で40年を超える全自動無人運転の歴史があります。 日本では、毎日約46万人が全自動無人運転のAGTを利用していますが、これまで1件も死亡事故を発生させたことがないシステムであることは、もっと認識されてもよいのではないでしょうか。 コラムi一覧へ戻る

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