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AGTコラム

AGTについて詳しくお伝えします

№10
AGTの駅構造

2025/03/31

 都市交通の効率化と快適性を追求するうえで、AGTの駅構造は重要な要素です。本コラムでは、AGTの駅構造に焦点を当て、その特徴と利点を解説します。

1.日本のAGTの駅構造

 日本のAGTの多くの駅は、1階が道路の中央分離帯とその中に建てられた複数の柱、2階にコンコース、3階に島式のプラットホームを配置した3層構造になっています。

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図1a 代表的なAGTの3層構造駅
図1b 中央分離帯に建てられた駅を支える柱

 1981年に開業した日本で最初のAGTであるポートライナーから、ニュートラム、シーサイドライン、六甲ライナー、ゆりかもめ、日暮里・舎人ライナーの全ての全自動無人運転の路線が、この3層構造で島式プラットホームの駅を採用しています。

 道路の中央に高架軌道を設けることが多いAGTは、駅も道路の中央に設置されます。 駅では道路の両側の歩道から利用者を一旦コンコース階に上げ、中央の改札口から更に上にあるプラットホームに上げる役割をコンコース階は果たしています。 そのため、AGTとコンコース階は切ってもきれない関係にあると言えます。

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図2コンコース階の改札口

 

2.プラットホーム形式

 

 ゆりかもめは写真4a、4bの竹芝駅を除き全ての駅が写真3a、3bの島式のプラットホームを採用していますが、写真4bの対向式のプラットホームに比べ島式はプラットホームの幅が広くとれるのが特長です。

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図3a 島式プラットホーム駅
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図3b 島式プラットホーム
図4a 対向式プラットホームの竹芝駅
図4b 竹芝駅の対向式プラットホーム

 

 島式プラットホームはまた、不案内の乗客が方向を間違えてプラットホームに上がっても、一旦コンコース階まで降りて反対のプラットホームに移動する必要がなく、対向式プラットホームに比べてユーザーフレンドリーな構造といえます。観光客の多いゆりかもめのような路線にはうってつけです。
 

 AGTで対向式プラットホームを採用している路線は、1983年開業のニューシャトル、1982年開業のユーカリが丘線、1985年開業の西武山口線の3路線しかありません。しかもこれらの駅はコンコース階なしの簡素な構成です。
 その後、コンコース付きの駅が主流となったのは、1986年ごろに始まったバブル景気の動きに合わせ、設備が高級化していった影響があると考えられます。

 

3.途上国向け駅構造


 BRTやLRTより輸送量が多く、鉄道よりは建設費が少なくて済むAGTの導入検討を途上国から求められた際、日本で一般化しているこの建設費のかさむコンコース付き駅がネックになります。コンコース付き駅の建築費は、土木建築費用全体の20%前後を占めるほど大きな割合です。そこでコンコース付き駅の代わりにコンコース無し駅の出番です。コンコース階がまるごとなくなるので、建設費をかなり抑えることができます。

 更に、プラットホームを対向式プラットホームにすることによって途上国特有の問題を解決することができます。日本でも高度成長時代に都市の鉄道のあちこちで編成車両の増加に伴うプラットホーム延長が必要になりました。人口増加のスピードが速い途上国ではこの列車長を長くする必要が高い確率で起こるため、プラットホームの延長が可能な対向式プラットホームが向いています。 島式プラットホームではプラットホームの延長は困難なためです。

 

4.コンコース無しの対向式プラットホーム


 日本のAGTでコンコース無しの対向式プラットホームを採用している路線としてニューシャトルがあります。
 1983年に開業したマニュアル運転の路線ですが、低コストをコンセプトに設計・建設されましたので、途上国にマッチした仕様に溢れています。

写真5a 対向式プラットホームでコンコース無しの駅
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写真5b 対向式プラットホームでコンコース無しの駅

写真5a,5bにあるように地上階とプラットホーム階がエレベータと階段で直接つながっています。

地上では、写真5cのような簡易型の改札が使われています。

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写真5c コンコース無し駅の地上部にある簡易改札口

 ニューシャトル以降、日本でコンコース無しの対向式の駅が採用されなくなった理由は、バブル景気による高級化だけでなく、同じころ、バリアフリー化が重要視されるようになり、エレベータが必須となったことも影響しています。島式のプラットホームはエレベータ設備が1機で済みますが、対向式の場合は2機必要となります。ところが、コンコース付き駅ですとコンコースとその上にあるプラットホームに1台、コンコースと両歩道の間に2台、合計3台のエレベータが必要となります。それに対し、対向式では、上下線プラットホームと地上との連絡に2台のエレベータで済みます。

 バリアフリー上、エレベータは必須な設備ですが、エレベータがあればエスカレータは省略可能です。

 

このような理由で途上国向けの駅の形式として需要増大に簡単に対応できるコンコース無しの対向式プラットホームの簡便な構造が推奨されるようになってきています。

© 2022 AGT研究所

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