
AGTコラム
AGTについて詳しくお伝えします
№07
AGTの路線パターン
2023/5/16
1.AGT大国、日本
日本には1981年に運行開始したポートライナーを筆頭に、 2008年の日暮里・舎人ライナーに至るまで、全部で10のAGT路線があり、毎日58万人(2019年統計値)を超える人々が利用しています。
日本の次にAGTの路線が多いのはフランスです。リール市、トゥールーズ市、レンヌ市に6つのAGT路線があり、毎日約30万人が利用しています。日本のAGTは、路線数、利用者数共に2位のフランスを大きく離し、世界ナンバーワンで、日本はAGT大国といえます。
2.3つの路線パターン
日本のAGTの路線のパターンは大きく分けて3つのパターンに分けられます。
一つ目は、鉄道の主要駅から郊外に延びる路線です。
二つ目は二つの異なる鉄道路線の駅をつなぐ路線です。
三つめは、鉄道の主要駅から出て周辺を巡ってまた同じ駅に戻る団地の循環バスのような路線です。
3.支線
1つ目の路線パターンは、主要駅の鉄道を本線とすると「支線」という言い方をされるものです。

鉄道の主要駅を基点として、新しく開発された地域の主要交通手段を担う働きをしています。
運行開始が早い順にご紹介しますと、1981年開業のポートライナーは、8.2km、12駅、毎日の利用者は約8万人の路線です。
神戸の中心にある三宮駅を起点とし、神戸の海を埋め立てて造ったポートアイランドの主要交通機関です。
ポートアイランドには、4つの大学のキャンバスや、先端技術研究所、先端医療施設などがあり、ピーク時間帯は26本、オフピーク時間帯でも15本の列車が三ノ宮駅を発着しています。

写真の赤い橋は、六甲山麓にある神戸とポートアイランドを繋ぐ神戸大橋です。
支線の2つ目は1983年開業のニューシャトルで、12.7km、13駅、毎日の利用者は約5万2千人の路線です。 1日の利用者数が20万人の大宮駅を起点とし、埼玉県のなかでも人口増加の多い新興住宅地の主要交通機関です。

ニューシャトルは写真に見られるように東北新幹線、上越新幹線の軌道脚を利用した構造に特徴があります。
支線の3つ目は、1990年開業の六甲ライナーで、4.5km、6駅、毎日の利用者は約3万5千人の路線です。魚崎駅で阪神本線とも接続しています。

ポートライナーの起点の三宮駅から東に約7㎞離れた住吉駅を起点とし、海を埋め立てて造られた六甲アイランドの主要交通機関です。
AGTの高架軌道は、近代的な建物、街並みによくフィットしています。
支線の4つ目は、1994年開業のアストラムラインで、18.4km、22駅、毎日の利用者は約6万6千人の路線です。

広島の本通駅を起点とし、再急勾配4.5%の急坂を登りながら広島市の北西部に広がる台地の住宅街の主要交通機関です。
新白鳥駅で山陽本線と、大町駅で可部線と接続しています。
日本最長のAGT路線であり、更に5.9%勾配のある7.1㎞の延伸を計画しています。
支線の5つ目は、2008年開業の日暮里・舎人ライナーで、9.7km、13駅、毎日の利用者は約9万1千人の路線です。

日暮里駅を起点とし、埼玉県との県境までの住宅地を通る路線で、西日暮里で東京メトロ千代田線、JR山手線、京浜東北線、宇都宮線と、熊野前駅で都営荒川線と接続しています。
日暮里・舎人ライナーが建設された尾久橋通りのバス路線は、激しい渋滞により通勤、通学時間が不規則で時間がかかっていましたが、AGTの運行開始により正確な運行時間と通勤時間短縮をもたらしました。
4.接続線
二つ目の路線パターンは、二つの異なる鉄道路線の駅をつなぐAGT路線です。

この路線パターンは、両端が鉄道駅と繋っていて、沿線には、大規模団地、工業団地、商業ビルなどが集まり、鉄道駅間の地域の価値を高めています。
まずは、1981年開業の南港ポートタウン線があげられます。
中央線のコスモスクエア駅と四ツ橋線住之江公園駅を結ぶ7.9km、10駅、毎日の利用者が約7万4千人の路線です。

コスモスクエア駅側には貿易センターを中心とするビジネスエリア、住之江公園駅側には工業団地、中間には南港ポートタウンの住宅団地が組みあわされており、朝のピーク時間帯は、地域から出る人々と地域に働きに来る人で上下線とも混雑する路線です。
接続線の2つ目は、1985年開業の西武・山口線です。
西武鉄道多摩湖線終点の多摩湖駅と狭山線終点の西武球場前駅を結ぶ2.8km、3駅の路線です。中間は西武園遊園地となっています。西武球場で試合やイベントが開催されるときは満員の乗客を運びます。

接続線の3つ目は、1989年開業の横浜シーサイドラインです。
JR京浜東北線の新杉田駅と京浜急行の金沢八景駅を繋ぐ10.8km、14駅、毎日の利用者が約5万2千人の路線です。

路線の南側には工業団地、北側には住宅団地が広がり、朝のピーク時間帯は地域から出る通勤通学の人々と地域に働きに来る人で上下線とも混雑する路線です。
接続線の4つ目は1995年開業のゆりかもめです。
新橋駅と有楽町線の豊洲駅を繋ぐ14.7㎞、16駅、毎日13万人が利用する路線です。

汐留駅で都営地下鉄大江戸線と、有明駅で臨海線と接続しています。
お台場の観光スポットや東京ビッグサイトを訪れる人の利用が多く、定期券利用者より、正規料金の収入が多い路線です。
片方が鉄道駅ではありませんが、三宮駅を起点とする支線としてご紹介したポートライナーは、神戸空港とつながっていて接続線の一種とも言えます。
5.循環線
三つ目の路線パターンは、鉄道の主要駅から出発して団地内を一周して元に戻るという循環バスのような路線です。

まずは、1983年開業のユーカリが丘線です。
京成線のユーカリが丘駅を起点とする単線4.1km、6駅、毎日の利用者が約2千人のコンパクトでシンプルな路線です。
2つ目は、三宮駅を起点とする支線としてご紹介したポートライナー線です。
市民広場駅で分岐し、島内を巡り三ノ宮駅に戻るという6.4km、9駅の一部単線区間を含むルートです。


国内では数の少ない循環路線ですが、バスに比べ時間が正確な点、信号待ちがないので早く目的地に着く点などが評価され、シンガポールでは
ブキットパンジャン、
センカン、
プンゴル
の3つの高密度の大団地の質の高い公共交通を担っています

6.まとめ
以上、支線パターンが5路線、接続パターンが4路線、循環パターンが2路線(ポートライナが重複)をご紹介しましたが、これらは、開業後に延伸工事を行った後の現在の姿による分類です。 延伸工事前のオリジナルの状態では、支線パターンが南港ポートタウン線とゆりかもめの2路線を加えた7路線、接続線パターンが西武山口線と横浜シーサイドラインの2路線と圧倒的に支線パターンが多いシステムでした。
それが、その後の延伸によって接続線に進化し、利便性を高め、乗客数を伸ばしています。
現在支線パターンとなっているアストラムラインも将来、JR山陽本線の西広島駅への延伸によって接続線パターンになる予定です。
このようにAGTの路線に延伸が多いのはAGTが、道路さえあれば延伸工事が可能な点が大きな特徴のシステムであることを実証しています。